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2 調査研究結果の要旨

2−1 北海道地区中小造船業の動向
北海道地区の中小造船業は、資本金10百万円未満の事業者が約7割、従業員数10人未満の事業者が約6割を占めるなど、大部分は小規模・零細な企業である。売上高でも年間1億円前後の事業者が多い。
船質別の工事実績をみると、鋼船等では建造が約17億円、修繕が約67億円となっており、修繕への依存度が高い構造になっている。FRP船の建造は船価べースでここ数年急激な減少傾向にあり、FRP船の太宗を占める漁船建造減退が大きく影響している。漁船以外に内航船等に需要先を求めようとしても、北海道においてはそもそも内航船の市場規模が極めて小さく対象とはなり得ない。
中小造船業の経営状況は、極めて厳しい局面にある。平成6年時点でも事業動向が下降していると認識していた事業者は6割を超えていたが、今後においても業況が下降するとの見方をしている事業者が太宗を占めている。実体面では、受注件数・受注採算ともに悪化していると考えられる。
その背景には、漁船造修に極めて高い依存度を持つ北海道の中小造船業にとっての、漁船の減船の影響が強く作用している。
経営上の問題点は、減船の影響から生じる需給バランスの崩れ→造船事業者間の競争激化→船価の低下→収益・業績の悪化→資金調達の困難化→投資余力の減退→競争力の低下→受注減少・受注採算悪化→業況不振という悪循環過程にある。
こうした事態への対応策として、陸上部門への進出拡大、作業船等への受注拡大、アルミ漁船への進出拡大、沿岸小型漁船への切換等の経営多角化対策か講じられてきた経緯かある。本調査研究の目的は、こうした対応策に沿ったものであり、また、中小造船所の技術的能力などを勘案すれば、この調査研究か狙う方向に進むことか、数少ない選択肢のうちの有望な一つであると考えられる。
2−2 海洋土木作業船に係る需要開拓
2−2−1 北海道地区における海洋土木作業船の現状と今後の動向
北海道における主たる作業船運用の場としての公共工事(港湾整備事業、漁港整備事業、沿岸漁場整備開発事業、海岸事業)については、その事業規模はここ数年横這い傾向にあり、今後についても横這い程度の伸びが予想され、先行きの不透明性を強めている傾向にある。しかしながら、工事の内容としては、大型消波ブロックの使用など大型工事化の動向や、既存の工事に比べた場合の相対的な難工事化が見通せる。
海洋土木事業者の作業船保有状況等に関しては、北海道が浚漢工事等に比較して消波ブロック設置等の工事が中心であることもあり、起重機船等のいわゆる『吊りもの』作業船がメインとなっている。ここ数年、低金利や公共工事の安定的規模での推移を背景として、大型起重機台船の取得や中小事業者の作業船保有意欲の高まりが顕著にみられた。こうした作業船(特に起重機船)の新造については、道外、特に瀬戸内地域の造船所へ流出している傾向が明らかにうかがえる。

 

 

 

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